もうじき神戸でエイズ会議

1994年夏、横浜で日本で初めてHIV/AIDSの国際会議が開催された。当時日本のエイズをとりまく環境はまだまだ酷いものだった。

この会議にボクはエイズ患者でもあり兄とも妹ともいうような付き合いをしていた人と一緒に行く約束をしていた。薬害の被害者でもあり他の感染症も多く患っていた。春先から随分調子が良かったのが夏の足音と共にガタガタと悪くなっていった。最後に会ったのは某国立大付属病院の簡易無菌室だった。ボクにももう退院することはないであろうことがわかった。「ボクはね、エイズじゃなくて肝硬変で死ぬんだよ。ボクの両親はボクのHIVを受け入れられないから、これは親孝行なんだ。」彼自身、HIVとある自分を長く受け入れられずにいたという。そんな彼には両親の気持ちは手に取るようにわかったのだろう。エイズボランティアと呼ばれてしまう生活をしていた当時のボクには、程なく亡くなった彼の弔いの席につくことはあってはいけなかったようだ。数日後から、一緒に泊まる予定で予約をしたツインの部屋に一人で泊まり1週間会議に通った。

当時、血友病患者のみなさんの間でパソコン通信はそれなりに流行していた。単なる流行ではない。情報の収集・共有化のツールとして有効に活用されていた。またゲイコミュニティにもある程度パソコン通信は浸透していた。当時は薬害と男性同性愛のみがクローズアップされ、そうでない者達に自分には無関係のことだと思わせたのは行政やマスコミのミスリードだ。

現在、日本のエイズをとりまく環境はさらに酷くなっている。先進国と呼ばれる国々の中で感染者が順調に増加しているのは日本だけだ。何らかの症状が出て感染に気付く例も後を絶たない。前述のミスリードの影響も少なくないと思う。珍しくなくなったので注目度も下がっている。そして無防備な感染機会が増え、治療開始のタイミングを計りそこなうケースが増える。エイズだけではない。感染症全般に言えることだろう。

7月1日から5日まで神戸でアジア・太平洋地域エイズ国際会議が開催される。会議プログラムの他にコンサート等の関連イベントも予定されていると聞いている。諸般の事情でボク自身行けないことは残念けど、面倒なことは考えなくていいから多くの人が足を運んで何かを感じてくれるといいと願っている。

公式サイト
http://www.icaap7.jp/jpn/index.html
兵庫県のエイズ会議のお知らせ文書
http://web.pref.hyogo.jp/sippei/ICAAP.pdf
HATプロジェクトのブログ（国際会議関連）
http://asajp.at.webry.info/theme/dbdb5f85ad.html